footballhack: 考えて走る9 オーバーラップ

2012年7月12日

考えて走る9 オーバーラップ

サッカーではサイドを制することが重要です。そのためには攻守ともに2〜4人のグループでの効果的なコンビネーションが必要であり、刻々と変化する状況下で即時的に有機的な動きを発揮しなければなりません。セオリーのオートメーション化です。

今回はサイド攻撃の場面でスペースを有効に使うための、初歩的なセオリーをひとつ紹介します。



  オーバーラップのイロハ

オーバーラップとは前方でボールを持った選手を後ろから追い越していく動きです。特にサイドハーフとサイドバックの関係でよく見られます。

左図のように後方からボールホルダーを追い越していくと、攻撃にスピードと厚みが出ます。

単純に人数を多くできる“数の攻め”で相手の守備網を突破しようってことです。







しかし、このオーバーラップの動きにはひとつの大きな誤解があります。以下に紹介するような場面ではオーバーラップが成功しづらく、したがって後方からの加勢が逆効果に終わる可能性を秘めています。






  ダメなオーバーラップ

前方でボールを持ったサイドハーフあるいはウィングの選手が、タッチライン間際まで開いているときは、外側からのオーバーラップをしてはいけません。

 なぜなら、このときボールホルダーのマーカーとタッチラインの間が非常に狭くなっていて、したがって駆け上がったサイドバックの選手に出すパスコースが狭まっているからです。

 これで無理にパスを出すと相手に引っかかって逆襲を食らう可能性があります。相手に当ってマイボールのスローインになればまだマシですが。。。



縦のパスコースをDFに切られたら、カットインすればいいと思いがちですが、このときボールホルダーとマーカーの距離は非常に接近しており、時すでに遅し。内側へのドリブルも体を寄せられて苦しい格好になり、ヘタすれば逆襲の起点になります。

また、仮にパスが通ったとしても、ボールを受けたサイドバックは依然タッチラインに近い位置におり、ここからクロスを上げるには正確性と飛距離が求められます。

Jとかみてるとだいたい詰まって後ろに戻すかぐちゃぐちゃってなって、、、あんまり美しくありません。今夏ドイツ(ハノーファー)へ渡る酒井宏樹とかいまだにこの動きをするから困ったものです。




  良い外側のオーバーラップ

じゃあ良いオーバーラップとはなんぞや。それはサイドチェンジ後などで、前方の選手が内側に絞った状態でボールを持っている時に行われます。

左図ではサイドハーフが中央寄りでボールを持っているため、タッチラインとの距離が十分空いています。

この状態からならオーバーラップする選手へパスを通す時に、相手の足に引っかかる心配はないのです。





 つまり、オーバーラップを仕掛ける際は、前の味方の位置(位相)を見れば良いのです。走り抜けるため十分な幅があれば思い切って駆け上がるのがよく、逆に前方のボールホルダーの外側にスペースがなければ、自重し後ろからのサポートに徹するのが吉です。

では始めの例のように、サイドハーフがタッチライン際まで開いているときは、絶対にオーバーラップをしてはいけないのでしょうか?以下の例はそのような状況下で有効な例を示しています。




  インナーラップ

オーバーラップはなにも常に外側を回らなければならないものではありません。時としてボールホルダーの内側を駆け抜けることで有効な攻撃に繋がる場合があります。


前方でボールホルダーがタッチライン際まで開いているとき、その内側を駆け抜けることでより効果的なサイド攻撃が可能になります。

サイドハーフがタッチライン際で1対1をしているとき、彼のマーカーはボールに集中して背後に駆け上がるサイドバックに気づくのが遅れます。



また、ボールホルダーからオーバラップする選手へのパスコースも確保されます。選手間の距離が適当に離れているので、全体に圧縮した前例と異なり、ひとりひとりのスペースも十分です。

走りこんだサイドバックが前例と比べてよりゴール近くでパスを受けれる点もメリットです。より中央でパスを受ければクロスに求められる技術とパワーが少なくて済みます。

ボールホルダーのマーカーが縦を切ってくれば、ボールホルダーはカットインをすればよいです。また、オフサイドポジションへ飛び出したサイドバックは、ボールが来なければそのままゆっくりタッチライン際まで開いてオンサイドポジションへ回復すれば、また同サイドにパスが回ってきた時にフリーになれます。DFはオフサイドポジションにいる選手を一時的に無視しますからね。

この攻撃は近年トレンドになりつつあるローポスト攻略へのひとつの布石です。この動きをチーム全体でマスターしてから次のステージに進むと、ビルバオやドイツ代表のようなダイナミックなパスサッカーに一歩近づきます。


 左図は昨年の高校選手権で見た形です。現代サッカーのトレンドになりつつある内側へのオーバラップが日本の高校生にも浸透しつつあるのを見て、日本サッカーは着実に成長しているなぁ、なんて感慨深くなります。







  まとめ

サイドを制するにためのキーポイントは
  1. スペースを確保する
  2. 有機的にローテーションする
ことの2点です。ただでさえ、スペースが限られているサイド攻撃です。守る側としてはタッチラインと守備者でボールを挟み安く、ボール奪取エリアのひとつに数えられています。

選手同士の距離が近すぎると幅や奥行きがなくなってしまうし、 有機的な動きでスペースを生成できなければすぐに詰んでしまいます。

だからこそ知恵を絞って望まないとサイドの攻略は何時まで経ってもできません。この動きから派生したサイド攻撃のバリエーションは又の機会に。



内側オーバーラップ from silkyskill on Vimeo.


次→考えて走る10 味方を追い越してフリーにさせる

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