footballhack: メッシの身体操作5 上半身のバネ

2011年2月14日

メッシの身体操作5 上半身のバネ

前回の記事では、後傾ドリブルでは内足荷重が難しいため前傾ドリブルの方が仕掛けに向いていることを紹介しました。今回はなぜ前傾ドリブルのほうが優れているかを説明したいと思います。

まず下の3つの写真を見てください。3枚とも左側がマシューズフェイントのフェイク動作時、右側が進行方向への切り返し時になっています。
1枚目はメッシです。フェイク時(左)は体の正面がフェイク方向を向いており、切り返し時(右)は体の正面が進行方向を向いています。

また、外足の接地時(左)は体全体が沈み込んでおり、 内足の接地時(右)は上体が浮き上がっています。内足荷重のお手本のような動きです。左手が進行方向へ伸びているのもメッシの特徴です。 


 2枚目はRマドリーのディ・マリア。フェイク時(左)は上体が右に曲がっていて、切り返し時(右)は進行方向に向かってやや前傾しています。

沈み込みと浮き上がりの様子も少しわかります。


3枚目はマルキーニョスです。 フェイク時(左)はフェイク方向に向かって上体が上半身が深く前傾しており、切り返し時(右)は進行方向に向かって前傾しています。

上の2枚と違って浮き上がりの様子が観察できないのは、右側の写真が内足が接地する前のものだからだと考えられます。下の動画を見れば、この後に浮き上がっている様子が見て取れます。



 上の3人に共通するのは、フェイク動作時にはフェイク方向に向かってへそが向いており、その後切り返すときには進行方向に向かってへそが向き直るという点です。ディ・マリア選手は例外に見えるかもしれませんが、大事なのは進行方向に体の正面を向けることで力強く地面を蹴って加速することです。

横向きに走り出すより体の正面に向かって走り出すほうが、スタートダッシュを速く切れそうなことは簡単に想像がつくと思います。縦移動から横移動へ移行する際に素早く体の向きを変えることは、外足が内足を追い越す動きにつながり、これによりDFより一歩分速くボールに追いつくことができるのです。

このことに気づいてからマシューズフェイントの練習に取り組みました。どのようにすれば上の写真の左右を繋げることができるか、また写真の左から右へ移る間にメッシ、ディマリア、マルキは何を意識しているだろうかと考えました。その答えは

進行方向に向けて頭を振ること

でした。首は振らずに固定して背骨をしならせるイメージです。まぁこれは個人的な身体操作感覚なので多くの人の理解を得られないかもしれませんが。

つまりどういうことかというと下の写真をご覧ください。

フェイク動作時に外足を接地し上体を沈み込ませたら、進行方向へ向けて一気に頭を振ります。(水色矢印)


頭を振ることで体の正面を進行方向に向けて前傾姿勢を作ることができます。

この動作をボールなしでもやってみるとよくわかるんですが、頭を振ると進行方向へ向かって倒れこむ感じになり、加速せざるを得なくなります

また自然に内足に重心移動できます。

フェイク方向へ前傾
進行方向へ頭を振る
内足を活かす
浮き上がるように加速 

という一連の動きは、マシューズフェイントの理想の形のように思えます。


近頃、体幹に軸を作れということがよく言われます。初めから極端な前傾姿勢を取った場合、ここぞというタイミングでそれ以上に体を倒して加速することが難しくなります。そのため平常時は体に軸を作って直立に近い姿勢を保つほうががいい気がします。

また、頭を振るということを考えた場合、体の軸つまり背骨を瞬間的に曲げる必要があるんじゃないかと思うのです。背骨を曲げるには側筋や腹筋などの体幹の筋肉を使わなければなりません。つまり体幹の筋肉を使って背骨を左右前後に曲げることがいわゆる上半身のバネなのではないかと思うのです。

左のディマリア選手は上の二人と比べるとちょっと特殊で、外足接地時に上半身の右脇にアーチができています。

彼は体の軸をしならせるようなイメージを持っていると考えられます。

このあと体にできたアーチを真っ直ぐに戻すようにして前傾姿勢を作っています。

結果として頭は水色の矢印のように動いていきます。



メッシが相手DFと競り合って倒れそうになりながら、驚異的なボディバランスでボールに食いつきドリブルを成功させるシーンを時折見ます。それもよく見ると、もう倒れてしまうだろうっていう体勢から体幹を捻じ曲げて頭を進行方向へ落とすことで、再び加速しているのです。そういうシーンの動画を集めたらアップしたいと思います。

人間の頭は結構重い(約6kgらしい)ので頭の位置で重心をコントロールする意識は大切かもしれません。そのためには体幹トレーニングが欠かせません。よりよい身体操作を心がけ、トレーニングを怠らなければ体をバネのように使うことも可能になるでしょう。

まとめ:
ドリブルでの仕掛けの際には頭を振ることで上半身のバネを使い加速することが重要

最後に興味深い動画を一つ

初めみたときはお笑い動画かと思いました笑。バネを縦に使うか横に使うかで僕の見解と相違がありますが、タイツ先生は体のパーツを物体として捉えることの重要性を説いてくれています。

個人的な追憶を追記
よく「フェイントは足だけではなく体でやるんだ」 と言われます。当然、動作が大きいほど相手はフェイクに釣られやすくなりますから。でも経験を積むうちに「フェイントなんてあんま使えねぇ」なんて思ったりもしました。しかし、今回のテーマを扱って、左右に体を揺らすボディフェイクは上半身のバネを使うためだったことが判って、知ったか指導者の言うこともあながち嘘じゃないなと思いました。

小学生のころ上半身だけのボディフェイクにこだわったことがありまして、相手を欺くためだけに上体をクネクネやっていたら、真の進行方向への加速が難しいということを体感的に学び、それからは直立ドリブルが僕のスタイルになったのでした。大人になってこの事を知ってからは悔やんでも悔やみきれません。

次→メッシの身体操作6 マシューズフェイントのまとめ


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