footballhack: FCBarcelona v Hercules戦評 20100912 走り書き

2010年9月12日

FCBarcelona v Hercules戦評 20100912 走り書き

大事件が起こった。バルサが開幕2戦目でホームで完敗。こういう試合を見るのもドキドキする。

そして、見つけてしまったバルサのプレッシングの仕組みとその弱点。長くなりそうなので何度かに分けて書く事にします。とりあえず戦評から。

ではかるく前半から。あまり真面目に見ていなかったのでなんともいえないけど、まず言えたのは、シャビ不在の穴の大きさマスチェラーノのポジショニングの下手さ

サッカーマガジン特別号「スペイン革命 ~世界最強の秘密~」にスペインサッカーのティキタカ(小気味よくパスを回して攻めることの総称らしい)について少しのヒントが書いてあり、シャビのインタビューからもティキタカのエッセンスがうかがい知れる。シャビいわく「パスの方向やドリブルを使って時間とスペースを調整することで味方が正しいポジショニングをとるように促し、攻撃のスピードをコントロールすることで不用意にボールロストする危険を少なくし、攻から守への切り替えを素早くできるような陣形を保つ。」ことがスペイン流あるいはバルサ流フットボールの秘訣らしい。

エルクレス戦前半、このティキタカの心得を会得したティキタカマスター(シャビ)不在の穴は大きく、代役をイニエスタが担おうとしていたが、なにぶん難しいプレーが多くなり、リズムが生まれなかった。イニエスタのいっこいっこのプレーはめちゃうまかったけど。



エルクレスは4-4-2の3ラインをしっかり引き、バルサのビルドアップ時は前からプレス、プレスをかわされたらリトリートして中央に守備陣形を収束させるようにして、全員が自陣に戻り、ブロックを形成して守っていた。2トップがハーフラインから10mくらい自陣側まで戻るというドン引きスタイルだった。

エルクレスの守備の意図は、プレス時もリトリート時もサイドを空けて、ひたすら中央を守ることにあるようだった。サイドにボールが出てから守備陣形を同サイドにスライドして、サイドで数的優位をつくり囲んでプレッシャーをかけるのが狙いだ。サイドバックのビルドアップ力を軽視し、さらにクロスも中を固めれば大丈夫だろうという考えのようだ。

バルサは効果的なサイドチェンジが出来ずに、エルクレスの守備陣形を横伸ばしに出来なかったので、結局中央も効果的に崩せなかった。

そこで、値千金の先制ゴールはエルクレス側のFKからパラグアイ人のバルデス選手が生んだ。バルサ守備陣の集中力が欠如していたのは明らかだった。ちなみにバルデス選手は後半途中退場するまで、精力的にピッチを駆け回り、攻撃ではキープ力を生かして起点になり、守備ではバルサのCBとボランチの辺りにプレッシャーをかけていた。素晴らしい働きでした。

で、マスチェラーノなのだが、彼はチームがボールポゼッションしているとき、ひたすら動いてパスコースを作ろうとしていた。動きすぎてスペースを潰してしまい、ボールを受けたときには体勢が悪くなるので、視野も悪くなり、当然ボールタッチが増えてしまい、セントラルMFやWGの選手に効果的に配給するという役割があまり出来ていなかった。

さらに言うと、攻から守への切り替え部分もチームの意図とはすこしズレていたみたいで、マスチェさんはリトリートの意識が少し高く、結果エルクレス攻撃手のドリブル突破を、数的優位であるにもかかわらずプロフェッショナルファウルで止めることになった。正直、前半で二枚イエローを貰って退場してもおかしくなかった。そのFKから失点した。

このポジションなら今のところブスケツの方が良いパフォーマンスをするでしょう。しかし、彼もこれから練習を重ねて、バルサのピボーテの役割を理解していってくれることでしょう。

では後半。後半は正直内容が濃すぎて書ききれるかわからないけど、頑張ります。

後半バルサ交代 マスチェ→シャビ ボヤン→ペドロ

これが功を奏して後半開始10分間くらいバルサの猛攻。シャビが入ったことで、パスの流れが生まれ一人ひとりのボールを持つ時間も減った。作ったシュートチャンスは少ないが、いつものバルサのゲーム支配「高いポゼッションで相手チームを押しこみ、ボールロスト後も高い位置でのプレッシング」のパターンを再現。エルクレスに攻撃させない時間帯ができる。

エルクレスは後半からシステムを4-1-4-1に変更し中央にさらに人を割くことで、バルサに中央のスペースを使わせない戦術に出た。守り方は前半と一緒で中を固め、外に追い出すやり方。トレゼゲの1トップで彼のキープ力に攻撃のすべてを任せるみたいな態度で出てきた。(実はそうではないことがあとからわかるのだが。)

DFラインと中盤ラインの間の1がクセモノで、ペナの中に押し込まれた時には5バックのようになり、ある程度前からプレスを掛けるときは中盤が5人横に並んだりと、臨機応変にバルサの攻撃に対応していた。日本代表がW杯で見せたような戦い方ですね。

バルサは猛攻を仕掛けるが、エルクレスのブロックを破れず、攻めあぐねる。エルクレスも守備一辺倒でボールを奪った瞬間にバルサの猛プレスにあい、攻撃につなげない。

そんななか、後半12分くらい、イニエスタから中央前線で張るビジャに楔パスが入り、カットされ、こぼれをケイタ(かアビダル?)が拾い、縦へのドリブルから縦パス。これはバレバレでエルクレス守備陣にカットされそのボールがルーズボールになり、バルサ守備ラインに張っていたトレゼゲの上に落ちる。この5分5分のルーズボールをピケと争いながらトレゼゲがモノにし、サイドに展開。そこからバルサは左サイドを崩され、中央に待っていたバルデスに折り返しが届き、シュートを決められる。

あれだけプレッシングをしてもルーズボール一つ拾われたら失点するなんて、なんて不幸なんだ。と最初思っていたが、これは必然的に起きたと言っても過言ではない。その理由については次の記事に書く事にします。

戦いはこのままバルサが終始ボールを保持したまま2-0で終了。とはいってもお互いに何度か決定機を作り出し、シュートミスやGKのセーブで得点にはならなかった。一つ言えたのは、2-0になったあとはバルサがポゼッションしていても、常にエルクレスのペースだったということだ。

バルサはうまくボールをペナ内に運びシュートを打つが、みなGKに阻まれ、スルーパスやクロスもあと一歩精度を欠き得点には至らなかった。このようなシーンが続くと不思議と守備側は集中力を高めていく。「このまま守りきれるんだ」という集団意識が働くのだ。

逆に、バルサの方には、「負の連鎖」ともいえるまずい雰囲気が流れ始める。時間経過と共に「負の連鎖」空気が徐々に選手の精神を蝕み、普段はありえない様なミスを頻発させる。ビルドアップの時のキックミスや判断ミスによるボールロスト。象徴的なのは、圧倒的なキープ力を誇るシャビが自陣ゴール前でマタドールターンを行い、相手FWに完全に読まれてボールを奪われたシーンだ。失点にはならなかったものの、あれが決められていたら、バルサは決して欠いてはいけないものを欠いたままシーズン序盤を戦うことになっただろう。

それにしてもエルクレスはなかなか良いチームだった。特に途中出場した左サイドハーフの選手。効果的なドリブルやランニングが目立った。あと中盤のロンゲの人。

バルサの敗因はと聞かれれば、前半の出来の悪さでしょう。マスチェのプレーの計算の出来なさとシャビがいないことで試合の主導権を握り切れなかったこと。どこのチームも先取点を与えるのは嫌なもので、それはバルサにとっても同じ。いくら攻撃力があるチームでも、あれだけ相手にペナ内を固められれば、運に味方してもらわないとゴールを奪えないでしょう。あとは、分析する者として使いたくない言葉をあえて使うならば、選手のコンディションの悪さによる最後の仕事の質の低下。因果関係は客観的事実に求めたいものです。

決してマスチェラーノ選手を蔑むような気持ちで書いたわけではありません。選手としてのクオリティの高さはよく知っているところです。しかし、バルサのピボーテは戦術的な決まりごとというか複雑な戦術理解が必要とされるポジションで、彼にいきなりそれをやれというのが「計算ミス」だったわけです。今回の「マスチェ前半で交代」事件は、同じスペイン語圏とはいえ、いかにスペインのサッカーのスタイルがその他の国国と異なっているかということを象徴する事件だったと思います。

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